「大丈夫ですか」

3/21
前へ
/128ページ
次へ
曇る眼鏡に当たる長い睫毛。マスクの隙間からわずかに見えるシャープな顎。 皆子は上体をデスクに倒し、下から雪乃の素顔を覗いた。 「こんなに美人なのに……。本当に勿体ない。雪乃ちゃんの可愛さが九十パーセントカットされちゃってるよ。何も知らない皆はね、うちの総務部の一番美人はあの岩瀬さんだって思ってるんだから」 「新入社員の岩瀬さんですか? 綺麗だと思います。ショートカットがくるんとしてて」 「いや、雪乃ちゃんの素顔を知ってる私からすれば、ナンバーワンは雪乃ちゃん」 「そんなことは……」 「ショートカットより黒髪ロングの方が正統派だよ。その髪も巫女さんみたいに結ばないでさ、巻いてアップにしたら可愛いのに。あと体型もね。雪乃ちゃんが爆乳だって知ったら、男達は手のひら返すんだろうなあ」 「皆子さん!」 控えめな雪乃も、“爆乳”と言うのはやめてほしいと小さく声を張った。 腕を交差させて胸を隠し、子ウサギのような目で皆子を睨む。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6336人が本棚に入れています
本棚に追加