「俺の家に来ませんか」

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晴久に何かされるなどとは思っていない。 とはいえ、人生で初めて男の家に泊まることになる。 こんな経験は今までなく、簡単に決断していいものか。 しかしどれだけ悩もうとも、今夜晴久と離れたくないという気持ちはどうにもできそうになかった。 「……本当に、いいんですか。お邪魔しても」 自分の手のひらを重ね合わせて身動ぎながら、恐る恐るそう尋ねた。 晴久は突拍子もない提案を彼女に了承してもらえたことに安堵し、「もちろん」と答える。 「細川さん、部屋の鍵は?」 「あっ……まだ開けたままです……」 「では閉めに行きましょう。俺の家には何もないので、必要なものがあればついでに部屋から持ってきて下さい。俺は玄関で待っていますから」 「……はい」 恐怖に包まれていた雪乃には、頼りになる晴久がナイトのように思えた。 別に彼に特別な意味はない。親切で言ってくれているのだから勘違いしてはいけない。 ……そう自分に言い聞かせても、優しい晴久に、胸は高鳴るばかりだった。
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