「俺の家に来ませんか」

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脱衣所の扉を背に閉め切ると、晴久は塞がらない口を右手で覆った。 今まで一緒にいた雪乃とは、まるで別人。 大きな瞳に、小さな唇、虫も殺さぬような清廉な彼女の顔立ちは、化粧などいらないほどに整っていた。 それだけではなく、黒づくめのオーバーサイズとはまるでイメージの違うフェミニンなパジャマ、一瞬しか見なかったがそれでもはっきりと分かる女性らしい体つき。 全体のフォルムからして違っている。 目に焼き付いたそれは晴久の頭から離れず、なぜ彼女が別人のように変身したのか混乱していた。 そして、安易に雪乃を家に入れたことにも不安を感じ始める。 もう一度彼女のところへ戻ったら、一体どこを見て、何を話せばいいものか。 そもそも上手く話ができるだろうか。 晴久にとって相手が美人だから話しにくいということは決してないが、地味な格好でも十分可愛らしく思っていた彼女がさらに魅力的な変貌を遂げたことは、家に泊める上では計算外だったのだ。 しばらくして、晴久は風呂を出た。 雪乃はソファのそばに膝を折って座り込み、緊張気味に大人しく待っていた。 「あ……おかえりなさい」 晴久は振り向いた彼女の顔を見て、やはり可愛らしい、しかもかなり自分好みだと感じ、目を逸らした。 「ソファに座っていていいですよ。今、お茶をいれますから」 「すみません。ありがとうございます」 立ち上がってソファの端っこに座った雪乃は、またそこでお雛様のように待っている。
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