6332人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ! おはよう雪乃ちゃん! 今日はいつもより遅いんだねぇ」
さらに皆子が後ろからやってきて、雪乃の肩を叩いた。
「皆子さん……」
皆子を振り返って「おはようございます」と言った後、視線を前に戻すと晴久が驚いた顔でこちらを見ていた。
雪乃は思わず凍りついたが、苦笑いで会釈を返す。
どうして貴方がここに、晴久の顔はしばらくそう言わんばかりだった。
晴久が雪乃に何か言う前に、彼は同僚の男に「高杉さん」と呼び止められて応対したため、ここで二人が話すことはなく過ぎていった。
雪乃は皆子とともにエレベーターに乗り、総務部のフロアへと上がっていく。
中の人が徐々に降りて減っていき、皆子と二人きりになったとき、彼女は興奮気味に口を開いた。
「雪乃ちゃん見た? さっきうちらの前にいた人。あれが営業部の課長だよ」
「……高杉さん、ですか?」
「そうそう。高杉課長! いつも話してるでしょ、超イケメンのデキ男って。朝から見られるなんて今日はついてるよ。実物は本当にイケメンだよねぇ。モデルみたい」
雪乃もウンウンと頷いた。
今までは全く興味が持てなかったのに、噂の課長があの晴久だと分かると一気に魅力的に見え、女性社員が騒ぐ気持ちが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!