「興味があるのは君だけだから」

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「興味があるのは君だけだから」

◇◇◇ 夕方七時、晴久は仕事を終えた。 本当はもっと早く終えるつもりでいたが、プレゼン指導を頼んできた部下を断るわけにもいかず、残業となった。 急いだがもう雪乃は帰っているだろうと思い、駅へ向かう。 会社を出てすぐに眼鏡とマスクをすると、誰も話しかけてはこなかった。 家に帰る頃には八時近くなっているだろう、そう思った晴久は、駅のホームへは行かず、掲示板の前で立ち止まって携帯電話を取り出した。 雪乃に謝罪をしたくてメッセージ画面を出すと、自分が送った素っ気ないメッセージが映し出される。 改めて読めば読むほど後悔し、一刻も早く言い訳をしたくてたまらなくなった。 帰るまで待てない、それに文字では伝わらないと感じた晴久は、親指で通話ボタンをタップした。 『……はい』 呼び出し音の後に彼女はすぐに出た。 今にも消えてしまいそうな掠れた声だが、晴久はホッとする。 「細川さん。いきなりすみません、今朝送ったメッセージのことでお話がしたいのですが、お時間ありますか」 『今……ですか』 「あ、いえ、時間を改めても。細川さんが良いなら、そちらへ出向くこともできますが」 『今は、外に出ています』 受話器の向こうはかすかに雑音がしており、彼女が声を抑えているのはそのためかと納得したが、わざわざ暗い中どうして外へ出ているのか、晴久は疑問に思った。
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