6411人が本棚に入れています
本棚に追加
「……怒っていますよね、今朝のこと。申し訳ありませんでした」
昨夜の彼女に比べてあまりにも口数が少なく、怒っていると判断した晴久はまずは謝罪から入ることに。
これには電話口の雪乃も「えっ」とトーンの高い声を漏らした。
『そんな、私、怒ってないです』
「いえ、俺が失礼なことを送ってしまったんです。できれば直接謝罪をしたいので、帰宅するときは連絡を貰えると嬉しいです。駅まで行きますから、家までお送りします」
『……高杉さん』
晴久は誠心誠意、できることを提案したつもりだったが、雪乃の声は切ないまま。
音量を最大にしても聞き取りにくい彼女の声を拾うため、晴久は携帯を耳にあてたまま駅を出て静かな場所へ移動した。
『高杉さん、待って下さい。切らないで……』
「え? はい」
『このまま……何か話していてもらえませんか』
「……ん、どういうことです?」
移動を終えて足を止めた。
携帯をこれでもかと強く寄せ、晴久は雪乃の様子がおかしいことに気付いた。
彼女の声は電話に出たときから何かに怯えている。
最初のコメントを投稿しよう!