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「細川さん、大丈夫ですか。何かありました?」
ついに雪乃が涙声で『高杉さん……』と漏らした。
その声に、晴久は血相を変える。
「どうしたんですか?」
『私っ……マスクを忘れてしまって……男の人に、つけられているかもしれなくて……』
「つけられてる!?」
『……分からないです……勘違いかも……』
晴久は話を聞きながら駅へと戻る。
電光掲示板で全方向の電車の時刻を目で確認した。
「今どこですか?」
『……電気屋さんです。会社の近くの、ミツハシデンキ……』
すぐに踵を返した。
ミツハシデンキまで徒歩で十五分。走れば五分だ。
「人がいるところで動かないで下さい。今から行きます」
『え、いえ来ていただくわけには……高杉さん、それは大丈夫ですから……』
「いえ、行きますから」
通話をしたまま、晴久は全力で走り出した。
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