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三階建てのミツハシデンキでは、雪乃が人の多い二階のコーナーで立っていた。
若いカップルや主婦、サラリーマンなど多くの客がいるが、一階へ降りるエスカレーター近くで立っている男のせいで戻ることができない。
エレベーターはあるものの、そこへ乗ることも恐怖だった。
ひとりで来ている私服の男は、この電気屋の中で雪乃に付きまとっていた。
見た目はごく普通の若い男。
最初は思い過ごしかと思っていた雪乃だが、立ち寄ったフロア、商品を眺めた棚で、やたらとその男が目に入った。
確信したのは、隣に立たれたときに肩が触れ、わざと離れてもくっつけてきたとき。
「はっ……はっ……」
拒否反応とも言える呼吸の乱れが起こると、男の行動はエスカレートした。
視界に入り込んできたり、恐る恐る様子をうかがうとニヤリと笑ったり。
ついにエスカレーターの前で待ち伏せをされ、雪乃は帰ることができなくなったのだ。
『着きました。どこにいますか』
繋がったままの晴久にすがるように、「二階です」と答えた。
迷惑をかけるわけにはいかないと思っているのに、エスカレーターを上がってきた晴久の姿を見た途端、彼女は安堵のあまり涙が溢れた。
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