「興味があるのは君だけだから」

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晴久は動けずにいた雪乃のもとへすぐに駆け寄ると、弱々しくすがってくる彼女の手を握った。 「細川さん、大丈夫ですか」 「高杉さん……」 「分かっています。エスカレーター付近にいる男ですよね。俺から見ても挙動がおかしいです」 エスカレーターの男は顔を歪め、じっと二人を睨む。 晴久と合流したにもかかわらず雪乃に執着を見せることは不審であり、この男はナンパ目的ではなくストーキングの常習者に違いないと確信した晴久は、雪乃の肩を引き寄せた。 「わっ……」 「俺と恋人のふりを」 「は、はいっ……」 晴久は雪乃の肩を抱くと、同時に自分の眼鏡とマスクを取り去った。 ギョッとした雪乃の予想通り、周囲の客が魔法にかけられたかのごとく晴久を振り返り、すれ違う店員も彼の素顔に釘付けになった。 彼はそれには関せず、エスカレーターめがけて颯爽と歩いていく。 晴久の素顔に圧倒されたのはエスカレーターに立っていた男も例外ではない。 男はスター俳優のような晴久を目の当たりにすると、大きな舌打ちをして顔を隠し、完敗を認めるかのごとく走り去っていった。
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