「興味があるのは君だけだから」

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晴久は「では……」と言おうとしたが、その前に雪乃が「でもっ」と口を挟む。 「今日は大丈夫です。二つ前の駅で降りればすぐのところにビジネスホテルがあります。今日はそこに泊まります」 「いや、細川さん、そんなこと言わずに」 「大丈夫です。本当に」 突風とともに電車が来た。 雪乃が先に乗り、それを追う形で晴久も乗り込む。 かろうじて何人か座れる、という程度だったため、雪乃はわざわざ晴久から離れ、ひとり分の席に座った。 晴久は諦めず、空いている席には座らず彼女の前の吊革に立つ。 「……大丈夫じゃないでしょう。怖い思いをしたのに、ひとりになるつもりですか」 美形の晴久が同じく美貌を隠せていない雪乃に囁く様子に、電車の中の女性たちの視線が集中した。 「……いいんです」 「駄目です」 晴久はそれだけピシャリと言い、一度会話を終わりにした。 ここでは人が多すぎて、小声ですら周囲に筒抜けだったからだ。 しかし電車が進んで人が降り、雪乃の隣が空くと、晴久はすぐに彼女の隣に座った。 雪乃は緊張し、鞄を抱き抱えて顔を埋める。 「俺の家に泊まって下さい」 念を押すようにそう告げると、彼女は顔を伏せたまま首を横に振る。
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