「興味があるのは君だけだから」

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晴久は彼女の手に両手を添え、口を開いた。 「あんなメッセージを送ってしまい申し訳ありませんでした。あのとき、細川さんが同じ会社の社員だと知って取り乱してしまったんです。……実は俺、社内の女性からストーカー被害を受けたことがありまして」 「……え?」 「もう何年も前の話です。特に問題もなく普通に接していたはずの部下の女性が、裏では周囲に恋人関係だと言い触らし、ストーキングで家を突き止められ、鍵を盗んで家の中に入られました。当時は警察沙汰になっています」 雪乃はすっかり顔を上げ、晴久を不憫な目で見つめていた。 晴久は自身のトラウマ話が情けなくてたまらなくなり、彼女と入れ違いに視線を逸らす。 「あれから、女性と上手く関わることができません。会社以外では顔を隠しているのも、一旦カフェに寄ってから出社するのも、会社の人間に自分の情報を悟られないためです。引っ越した今の自宅を知られたくなくて」 「……そんなことがあったんですね」 「細川さんが社員だと知ったときも、もしかして出会いは仕組まれたものだったのではないかと疑心暗鬼になったんです。……おかしいですよね。先に声をかけたのは俺なのに」 「そんなことありません! 理屈では分かっていても、同じことが起こるとすごく恐怖を感じるものです。私も同じですから、よく分かります」
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