「興味があるのは君だけだから」

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その夜、十時。 雪乃は黄色いパジャマを着て脱衣所から出ると、ほかほかのまま、ソファにいる晴久のもとへ戻った。 「高杉さん。お風呂、あがりました」 「あっ、はい」 二人はここへ来る前に途中で雪乃の家に寄り、泊まりに必要な荷物を持ってきてから晴久の家へ、昨夜と全く同じ手順をとった。 雪乃が先にシャワーを浴びたのも、昨夜のとおり。 しかし、晴久は昨夜よりも余裕を隠せずにいた。 同じ会社であることも判明し、お互いにもう隠し事は何もない。 自分のトラウマすらも明かしたことで彼女とのわだかまりが無くなり、昨日より、さらに雪乃が魅力的に見えるのだ。 そんな彼女と今夜も一緒に眠ることになる。 「俺も入ってきます」 「はい」 シャワーを浴びると少しだけ冷静になった。 まだ付き合っていないのに手を出すようなことは硬派な晴久には決心がつかず、かといってこの状況で付き合いを申し出て下心だと思われるのは心外である。 何より、雪乃はついさっきトラウマを呼び起こすような怖い目に遇ったばかりであり、そんな彼女に付け入るような真似はしたくなかった。
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