「興味があるのは君だけだから」

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雪乃とともにベッドに入り、サイドランプを点けた。 今夜は腕枕ができる距離まで近づき、晴久は彼女の手を握る。 「……高杉さん?」 「今日、怖い思いをしましたね。大丈夫でしたか」 小山から聞いた、雪乃が襲われたという経験について、彼女の口からは聞いていない。 晴久はあえて触れることはしなかった。 わざわざそこまで話さなかったということは、雪乃が口に出すことすら嫌なほどに忘れたい出来事なのだろうと思ったからだ。 その代わり、晴久は彼女がまたひとりきりで耐えることのないように、今夜は傷を癒すための優しい言葉をかけてあげたかった。 「高杉さんが来てくれたから、大丈夫です」 溶けるような笑顔を向けてくる彼女への欲望をぐっと堪える。 「細川さんが無事で俺も良かったです」 「……あの。高杉さん、私に敬語を使わなくても良いんですよ。なんだか上司と部下って感じがして寂しいです。もちろん私は部下ですけど……出会ったのは、会社じゃないですから」 「え……? いや、それは……」 「呼び方も、“細川さん”より、“雪乃”の方が嬉しいです」 いきなり何を言い出すのかとギョッとした晴久だが、雪乃はあくまで真剣な表情だった。 やがて晴久は彼女が自分を“女性社員”だと意識しないように気遣ってくれているのだと気が付くと、予想外の可愛さに感動さえし始めた。 そして好奇心は止まらず、さっそくその善意にあやかってみる。
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