「興味があるのは君だけだから」

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「本当に? 雪乃って呼んでいいの?」 「……はい、呼んで、ください……」 実際に口にされると今度は言い出しっぺの雪乃の方が照れてしまい、掛け布団に口元を埋めた。 そんな彼女が可愛くて、晴久の声はどんどん甘くなる。 「じゃあ、雪乃」 「は、はい……」 すぐにでも彼女を抱き締めたかったが、このじりじりとした胸の焼けつく距離感もたまらなかった。 無理強いをせず、ゆっくりと雪乃の反応を見たくなる。 「もう電気は買わなくていい。これからは待ち合わせて一緒に帰ろう。で、ここに泊まれば良い。荷物もここに置きっぱなしにして」 「高杉さん……そんな、さすがにご迷惑では……」 「いいんだ。もうひとりにしたくない。今日みたいに危険なことになっていないかと思うと、気が気じゃないんだ」 お酒を飲んだようにポーッと赤くなっている雪乃は、晴久の甘い言葉に夢見心地となっていく。 その気分はやがて、徐々に眠気へと変わっていった。 晴久もそれは分かっていたが、このまま彼女に甘く囁き続け、溶けるように眠ってしまったとしてもそれで良かった。 「高杉さん……」 「分かった? 明日も一緒に帰って、うちにおいで」 「……はい……」 言質を取ったところで、さらに彼女の耳に唇を寄せ、低い声で囁く。 「それと、勘違いしないでほしい。確かに岩瀬さんから手紙を受け取ったのは事実だけど、俺が興味があるのは、君だけだから」 その言葉が聞こえたかどうかのギリギリのタイミングで、雪乃は熱を持った色っぽい顔のまま眠りに落ちていく。 晴久は雪乃に欲情した気持ちを気合いで飲み込み、自分を奮い立たせて我慢をした。 おそらく次は耐えられずに奪ってしまうだろう、そんな予感に浸りながら、しばらく彼女の寝顔を見つめていた。
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