「俺に下心がないと思う?」

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「俺に下心がないと思う?」

◇◇◇ 「雪乃ちゃん、なんか良いことあった?」 いつもと変わらない和やかな総務部。 皆子は向かいのデスクで黙々と仕事をしていた雪乃を覗き込み、そう尋ねた。 「えっ……そう見えますか?」 眼鏡の奥で幸せそうに緩んでいた目元、頬が上がりいつもより高い位置にあるマスク。 いつも雪乃をじっくり観察している皆子には、他の人には到底気付かない彼女の変化をすぐに感じ取れた。 「だってニヤニヤしてるもん。ほら、白状しろー? 何があったー?」 「な、何もないですって」 ボールペンでカチカチとちょっかいを出してくる皆子を止めながら、雪乃は首を振る。 晴久のことは、誰にも話す気がなかった。 もし彼に泊めてもらっていることが誰かに知られたら、女性に騒がれることが苦手な晴久に迷惑がかかる。 皆子のことを疑ってはいないものの、彼のためにも情報を洩らしてはならない、雪乃はそう決めていた。 しかし、次に皆子に「もしかして、好きな人でもできた?」というピンポイントの質問をされると、思わず顔が赤くなった。 「雪乃ちゃん……」 「あ……いえ、違」 「嘘つくの下手!絶対好きな人できたんじゃん! 誰!? どこの人!?」 皆子の声が周囲に聞こえることを恐れ、慌てて「わー! わー!」と自分の声を重ねた雪乃だが、そのせいで彼女の言い分が図星であると証明してしまった。
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