「俺に下心がないと思う?」

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◇◇◇ 大手企業への営業を終え、晴久と小山は近くの蕎麦屋で昼食を取っていた。 途中、テーブルに置いてあった小山の携帯にメッセージが入った。 すぐに確認した小山は、蕎麦屋にも関わらず「へー!」と声を上げる。 「声が大きい。どうした」 「いや、彼女からメッセが来て」 蕎麦をすするところだった晴久に対し、小山は携帯の画面を見せた。 恥ずかし気もなくハートマークだらけのやり取りを見せてくる小山に眉を寄せつつ、今来たという最新のメッセージを覗き込む。 『ついにうちの雪乃ちゃんに春が来た! 好きな人ができたんだって! まだ片思いみたいから秘密だよー!』 桜の絵文字が散りばめられた皆子のメッセージを読んだ晴久は、蕎麦を詰まらせ咳き込んだ。 店に備え付けられたティッシュで口を塞ぎながら、小山を睨む。 それに気付かない小山はさらにペラペラと補足を話し出した。 「雪乃ちゃんってこの間話した総務の細川さんのことですよ。隠れ美人の」 「……秘密って書いてあっただろ。俺に見せたらまずいんじゃないのか」 喉に引っ掛かった蕎麦をお茶で流し込んだ後、晴久はそう言った。 しかし、心臓はバクバクと鳴っていた。 雪乃の好きな人というのが誰だか分からないほど、晴久は鈍感ではない。 昨夜のこともあり、このタイミングでのその手の話は、十中八九自分のことだろうと確信していた。
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