「俺に下心がないと思う?」

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「雪乃って、いくつだっけ」 晴久は食べながら尋ねた。 自分より明らかに若いのに、主婦のように短時間で料理してみせた雪乃が単純にすごいと感じたのだ。 「二十六です」 「え、すごい若いな。俺はもっといってる」 「知ってます。三十二歳でしたっけ」 「……なんで知ってるんだ?」 「あ……すみません、仲良しの先輩が詳しかったので……」 晴久は、小山の彼女だとピンと来た。 そして小山が浮かんだことで、同時に、彼が昼間言っていた「雪乃に好きな人ができた」という話も思い出す。 晴久は隣にいる雪乃を見て、また顔が熱くなってきた。 料理をしてほしいと思っていたわけではないが、この容姿で家庭的な部分まで見せられてはいよいよ惚れ直す要素ばかり。 両思いだという事実を知っているのにこの状況を保っているのは、我慢の限界だった。 「……雪乃」 抑えきれずにそう呼んでみると、彼女は無垢な瞳で「はい」と振り向いた。 晴久はソファで距離を詰める。 「高杉、さん……?」 「それさ、気になるんだ。俺は雪乃って呼んでるのに、そっちは“高杉さん”じゃおかしいだろ。晴久って呼んで」 「えぇ!? で、でも……一応、会社では上司、ですし……」 亀のように肩をすぼめながら、雪乃は真っ赤になっていく。 晴久は彼女の手を握り、身を乗り出した。 恥ずかしくて後退りをする雪乃を逃がさず、フッと笑みを落とす。 「今さら何言ってるんだ。こんなの、ただの上司なわけないだろ」
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