「俺に下心がないと思う?」

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しかし時すでに遅く、彼の言うことをすっかり真に受けてしまった雪乃は顔を真っ赤に染め、口をパクパクと動かしている。 「すみません、私っ……」 「ごめんごめん、俺が驚かせたね。謝らなくていいから」 「いえ、私が悪いんです!」 「悪くないよ。雪乃、落ち着いて」 晴久はとにかく混乱している彼女から離れてあげようと思い、上から退こうとしたのだが、慌てた雪乃に手首の裾を掴まれているため動けない。 「私、十年も男の人と関わっていなくて、自分でも、至らない点が多いと思うのですが……」 「雪乃、大丈夫だから」 「もちろん、そういう経験もなくて……その……男の人と、こういう……」 「……雪乃」 色々と口走り始めた彼女に、晴久の雲行きは怪しくなっていった。 予想していなかったわけではないのに、雪乃に経験がないと明かされると、彼女に対する気持ちがじわじわと胸に迫ってくる。 「何か失態をしたり、痛がったりしてしまうかもしれないですが……それでも晴久さんが嫌じゃなければ、私は、全然……」 「えっ……」 「色々とやり方を教えてもらえれば、できるだけ挑戦してみますので……」 「いや、ちょっと待って……!」 ついに耐えきれず、晴久は上体を起こした。 今夜はまだ手は出すまいと決めていたのに、彼の中でプランは一気に揺らぎ出す。
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