「今夜は優しくできそうにない」

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雪乃が準備ができた旨の連絡を入れると、晴久はすぐに迎えに来た。 「晴久さん、お待たせしまし、た……」 エントランスで落ち合うと、雪乃は現れた晴久に目を奪われた。 彼の私服はシンプルだがスマートで、端正な顔を際立たせている。 スーツのときは後ろに流していた髪を今日の彼は前に流しており、いつもより若々しく見えた。 スーツでは上司というイメージが強かったが、今は恋人として隣を歩くのだと思うと、これからデートだという実感が湧いてくる。 しかし舞い上がりそうになっているのは晴久も同じだった。 「どうしよう、すごい可愛いな、雪乃……」 可憐に仕上がっている雪乃に、簡単に肩を抱くことも躊躇するほど。 「そんな……! 晴久さんの方が素敵で、直視できないです」 眩しい、というジェスチャーをした雪乃のおかげでほんの少し緊張がほぐれていく。 思いきって袖に触れてきた彼女に応え、晴久はその手を握った。
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