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この日、どこへ行きたい、という晴久の問いに対して雪乃がリクエストしたのは、「王道のデートコース」。
恋人らしいことを何もしたことがない彼女は、とにかく好きな人とデートができるだけで満足だった。
ざっくりとしたリクエストだが、何をしても正解となることに晴久も肩の荷が下りる。
まずは、人気のイタリアンのお店へ。
テラス際の席で、雪乃は鮭のクリームソース、晴久はボロネーゼを食べながら、これからの予定を本格的に話し合った。
「暗いところが苦手だと、映画館とか行ったことない?」
「そうですね……高校生のときに友達と行ったきりです」
「そうか。今日は? 暗いところには行かずに買い物とかテーマパークに行ってもいいし、あえて映画とか暗い場所に挑戦してもいいよ。今日は俺がいるから、手を繋いでてあげるし」
「え! 本当ですか!」
ひとつの案として言っただけなのだが、彼女の食い付きは予想以上だった。
雪乃は映画館に食い付いたのではなく、晴久が手を繋いでいてくれることに食い付いたのだが、それを悟られないようすぐに「映画に行ってみたいです」と言い直した。
「いいよ。調べる」
すでにボロネーゼを食べ終えていた晴久は、テーブルの上で携帯の画面を操作し始めた。
その間に、雪乃はゆっくりとパスタの続きを食べる。
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