「今夜は優しくできそうにない」

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「もう暗くなるけど、どうしたい? ……あと一ヶ所寄れるところあるんだけど」 「え! 是非行きたいです。どこですか?」 「秘密。でも、結構暗いところ」 “暗い”にピクリと反応した雪乃だが、すぐに晴久がいればどこだって怖くないと思い直した。 長年避けていた映画館だって、暗闇のことなど考える暇もないほど、雪乃の頭の中は晴久でいっぱいになったのだ。 「晴久さんと一緒なら、暗いところでもいいです」 ギュッと彼の腕に抱きついて、雪乃は笑った。 清楚な顔立ちとはアンバランスなほど大きな胸が腕に当たり、晴久はビクンと背筋を伸ばす。 「晴久さん?」 「いや、何でもない。行こう」 胸の感覚に気がいくものの、心から楽しそうにしている雪乃を見ると、また和やかな気持ちに戻った。
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