6325人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
ショッピングモールから数分歩き、大通りから一本裏道へと入った。
表の黄色いイルミネーションはぱったりと途絶え、閑静な住宅街へ続いている。
ぽつぽつとした電灯が並んではいるが、小気味の悪い枯れた並木道に、雪乃はキュッと手に力を込めた。
「怖い?」
晴久は空いている手で彼女の頭を撫で、雪乃は彼の問いかけに首を横に振った。
晴久がいるから胸にくるような恐怖は感じないものの、こんな夜道に何があるのかと彼女はハラハラし始める。
晴久を信用している。だから変な場所には連れて行かれるわけはない。
それは分かっているものの、秘密と言った晴久に目的地を尋ねたくて仕方なくなってきた。
「……暗いですね」
「これ以上は暗くならないから大丈夫だよ」
「どこに行くんですか?」
「もう着いてる」
着いてる? と首を傾げながら、雪乃は辺りを見回した。
数メートル先にコンビニや居酒屋ののれんが見えるだけで、特にデートスポットらしきものは何もない。
もう一度晴久の顔を見上げるが、彼は歩道の途中で立ち止まって前を見ているだけだった。
雪乃が夢中で掴んでいる晴久の腕。
彼はその腕を持ち上げ、手首を目の前に持ってくると、腕時計を見た。
「いくよ、雪乃」
「え?」
晴久とともに顔を上げる。
するとその瞬間、鬱蒼としていた並木に次々と青い光が灯り出した。
「わっ……!?」
海の波のように、青い粒の煌めきが手前から奥の並木へと一瞬で広がっていく。
道の両端に並ぶすべての枯れ木が青い光に変わると、辺りは幻想的な空間に包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!