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「ここは午後六時になると、こうなるんだ」
青い空間の中でぼんやりと照らされている晴久が、落ち着いた声でそう言った。
「……綺麗……」
雪乃の瞳にも青い光が揺れている。
ドキドキした今日一日のトキメキがじんわりと、穏やかに心に溶けていくようだった。
暗闇を避けていた雪乃は、いつもなら見る間もなく足早に通りすぎていく光景。
イルミネーションを見てこんなに胸がいっぱいになることは、今までなかった。
「夜道も悪くないだろう?」
「晴久さん……」
言葉を失うほど感動した雪乃は、ぴったりと晴久に体を寄せた。
彼の腕に頬をくっつけ、目の前のロマンチックな景色をうっとりと眺める。
「雪乃。これからは俺がそばにいるから。行きたい場所にどこだって連れて行くよ」
猫のように頬を擦り寄せて、彼の言葉を噛み締めた。
雪乃は今日のデートで実感していた。晴久が隣にいればどこへでも行ける。
彼のおかげで失った十年を取り戻し、やっと自由を手に入れた気がした。
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