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それには、同情する。なんて馬鹿な、と思わなくもないが、仕方がない部分もあったのかもしれない。自分が大事ということさえ分かっていれば、そう、信じられていれば、このような地獄、味わわずに済んだかもしれない。霊斬は自身に対して、あまりに冷静で、あまりに冷酷だった。そのくせに、生きる執念は人一倍強い。
この男は本当に、これっぽっちも〝自分が大事〟などとは思っていない。
それは確かである。
ここまで自身に対して、冷酷でいられるのはこの男ぐらいだろう。
霊斬がこのような生き方をしていなければ、〝因縁引受人〟などと言う裏稼業は存在しなかったかもしれない。
もっと楽に、霊斬は生きることができたかもしれない。
そう、これは事実をもとにした〝可能性〟の話である。
自分を大事にするということを、誰かに説かれていれば、闇しか見えない道に迷い込むこともなかったかもしれない。逆に、光の中でのびのびと生きていられたのかもしれない。
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