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将也の恋人
今日も上司に怒られた。俺が仕事できないからなんだけど、それでも「役立たず」とか「人間の底辺」とか言われるのは傷つく。今日は、提出した報告書に誤字があって怒られたんだっけ。目の前でシュレッダーにかけられるとは思わなかったけど、ミスしたのは自分だから仕方ない。
今日も終電ギリギリまで残業してしまって、ようやくマンションの自室にたどり着いた。
「ただいま…」
「あ、将也お帰り〜今日も遅くまで残業?」
「涼くん…うん、今日も仕事でミスしちゃって…こんな時間になっちゃった。…もしかして、ずっと起きてたの?」
「へへっ、今日のシチューめっちゃ上手くできたんだよね〜!だから、将也と一緒に食べたくて待ってたんだ〜!ほらほら、鞄置いて服も楽なのに着替えてきな?俺は、ご飯の準備しとくからさ」
「うん…涼くんごめんね、いつもありがとう」
「将也こそ、お仕事お疲れ様だよ〜」
涼くんは、俺の高校時代からの同級生で今は恋人同士。こんなダメダメな俺の事を好きって言ってくれる、仕事も家事もなんでもできるかっこいい人。
俺は、高校生の時から鈍臭くてドジで根暗だ。それは今も変わらない。会社の人に声をかけられただけで、凄くびっくりして挙動不審になってしまう。それに、1度に色々な指示をされるとパニックになって、仕事をこなすのに人よりも時間がかかってしまう。
そんな俺の事を、どうしてか涼くんは好きって言ってくれる。俺だって、かっこよくて優しくて気がきいて誰にでもそつなく接することができる涼くんが好き。
「わっ、涼くんが作ってくれたシチュー、凄く美味しい」
「ふっふっふ〜でしょでしょ!今までで1番美味しくできたと言っても過言ではないクオリティだよ〜」
「涼くんは凄いなぁ…仕事もしてるのに、家事もこなせて…俺、いつも涼くんにおんぶに抱っこで…仕事もできなくて………俺…」
「はいストーップ!将也またネガティブモード入ってるよ〜?仕事でのミスなんて、誰でもしちゃうんだから、ね?」
「うぅ…ありがとう…いつもごめんね」
「いーのいーの!将也を元気付けるのは、彼氏である俺の役目だよ〜」
本当に、涼くんは俺には勿体無いくらい凄い恋人だ。いつも涼くんから愛情を貰ってばっかりで、俺からは何も返せてない…。
「そうだ!将也、明日仕事休みだっけ?」
「えっと…うん、明日は休みだよ」
「そっか……じゃあさ、お風呂一緒に入ろっか」
「………………うん」
涼くんからのお誘いに照れてしまった…。風呂の誘いは「そういう合図」って言う事に、いつの間にかなっていた。大学生の時から同棲していて、もう何度もしているのに…ちょっと恥ずかしい…。
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