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緩やかな坂を上りきると、レンガ造りの校舎が見えてきた。
目指してきた場所。中高一貫校に、私は高校からの外部生として今日入学する。
流星とは話をしないまま小学校は卒業。
中学校に流星はいなかった。中高一貫の私立校に進んだって後から聞いた。
あれから三年。
やっとキミに会える。新しい私で。
「ひゃー、やっぱり私立って校舎からしてキレイだよねぇ」
「ほんと。なんとか合格できて嬉しー」
「星奈、受験勉強がんばったもんね。あと、自分磨きもっ。高校デビューじゃん」
親友の芽衣にほめらると、なんだか照れる。「そうかな、私変わった?」
「うん、可愛いかわいい! 流星くん? だっけ。初恋の人と三年ぶりに会うんだもんねぇ」
芽衣に頭をよしよしされて、へへっと私は笑う。
変わろうとがんばった。勉強もおしゃれも。
中学からここに進学した流星と高等部で再会するために。
あのときのことを謝れるように。今度こそ、ウソなんてつかなくていいように。
芽衣と校舎に入ろうとすると、腕章をつけた在校生らしき人に呼び止められた。
「あなたたち高校からの外部生だよね? 新入生は、あちらの入り口から入ってくださーい」
手で示された入り口は、少し遠い。
「えっ、でもこっちにも入り口あるのに」
芽衣がちょっと不満そうに言う。
「こちらは、内部生専用なので」
案内係の生徒は、鼻で笑ってそう言った。
芽衣と顔を見合わせる。
内部生と入り口からして分かれてるんだ……。なんだか内部生と外部生で区別されてるようで、あまりいい気はしない。
「いーじゃん、ここから入れてあげたって」
後ろから声がして振り返ると、制服を少し着崩した男子たちが三人立っていた。
「うわ、なんかキラキラオーラがまぶしっ」
芽衣がつぶやく。
確かに、全員かっこいい感じでどこかのアイドルグループみたい。
こんな人たちが同じ学校にいるんだ……。
その中で、少しみんなから離れて立っている人を見てはっとする。
子犬みたいな澄んだ目に、高い鼻。ちょっと薄い唇。
さらりとした黒髪が、風に揺れる。
忘れるわけない。
あの頃より、断然大人っぽいけど、見間違えたりなんかしない。
「りゅ、流星」
思わず声に出してしまう。でも声がかすれて届かない。
代わりに、真ん中に立っている背の高い男子がじろりと私を見下ろした。この人には聞こえちゃったみたいだ。
「あんた何。気安く流星な話しかけんなよ」
冷たく言われて、かたまってしまう。
この人、怖い。
「ご、ごめんなさ……」
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