右腕募集。

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 γ(ガンマ)の狙撃の腕は完璧と言っていい。  そのほか、機能実証用ジムでのあらゆるテストを見た結果、ファディンは乾坤一擲、大勝負を決めた。 「よし、その腕、買った!」 「お買い上げありがとうございます!」  オルソが言い、魔法のような速さで契約書一式を取り出す。 「腕……」  γ(ガンマ)が呟いたことに、二人とも気づかず、さっそく契約のために別室へと移る。  そして契約を終えて戻ってきたとき、ファディンは驚いた。  なんとγ(ガンマ)が、左手に自身の右腕を握っている。  その右腕は、肩から無残にもぎ取られていた。 「何を……」  ファディンが呟いた声に、γ(ガンマ)は笑って答えた。 「アナタ、私の腕を買うと言った。だから取っておいたヨ」  ぷ、とオルソが横でこらえきれないように噴き出す。  いまやファディンは憤慨していた。 「どういうことだ」  オルソは必死で真顔を作っている。 「いえ、失礼。これは私にも予想外のことで……  しかし、先に申し上げましたでしょう。  人間の言葉を覚えるというのはなかなか難しいのですよ。  特に戦闘用であるγ(ガンマ)には、さほど高い言語機能が学習させられていないのです」 「しかしこれでは……」 「むろん、修理は承ります。ちなみに修理費は……」  オルソは、にやつきを隠せない様子で電卓をたたく。  γ(ガンマ)までもが、にやりと笑った気がして、ファディンは一瞬、ぞっとした。  オルソが言った。 「ご心配なく。  戦闘AIは、その主人に最も忠実に利益をはかるようできております。  納品前に、間違いなくデータ項目”主人”は、  ファディン様に書き換えておきますので」
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