右腕募集。

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 ファディン探偵事務所は今、優秀な狙撃手を探していた。  そこへ話を持ち掛けてきたのが、オルソ商会のオルソだ。  オルソは闇であらゆる武器を扱っているが、その中には人型のAIロボットも含まれる。 「こちらが、先日ご紹介した『オルソγ(ガンマ)』です」 「ほお」  オルソの口車に乗せられて、嫌々(いやいや)見に来ただけだというのに、ファディンは思わず感嘆の声を上げた。  ロボットといっても、どこからどう見ても生身の女性に見える。  オルソが説明する。 「スナイパー機能のほかに、尾行機能も抜群。  もちろん、頑丈さ、脚力や腕力は人間の比ではありません。  それに狙撃や尾行は、経験を積むたびに学習して高度に発達します。  おすすめですよ」  ファディンは尋ねた。 「そうかね。美人局(つつもたせ)も可能かな」 「正直、そいつはまだまだで。人間の会話というのは、案外に学習が難しいものなのですよ」  ふうん、とファディンは、わざと気のないふうに呟いた。  正直言って、貧乏探偵社には、こいつはかなりの出費だ。  とはいえ、ひとまず性能を見せてもらうだけの価値はあるかと、気持ちが傾いてもいる。  それを見透かしているように、オルソが言った。 「さっそく、γ(ガンマ)の狙撃の腕をお見せしましょう」  するとγ(ガンマ)は、右腕の袖を軽くまくり上げ、(こぶし)を握って、にこりと自信ありげにファディンに微笑んでみせる。  その動きと表情に、本当に人間のようだな、とファディンは思い、いっそう興味を抱いた。
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