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佐々木、恐縮 ②
そして、説明し終わると、佐々木が真剣な顔で
「俺に何ができるかわかりませんが…なにかお礼、できませんか?」
と、蓮に聞く。
「お礼なんて、そんな…」
昨日、色々話して、
もっとこの人といっしょにいたい、
このまま別れてしまったら、きっと佐々木さんは俺のことなんて忘れてしまう。
だから酔い潰れてくれたらな…
と、思ってしまったのにお礼だなんて…
蓮は咄嗟に手を横に振った。
「でもなにか…ここまでしていただいて、なにもしないなんて…俺が、何かしいたいです‼︎」
蓮が断っても、佐々木は食い下がる。
佐々木さんの気持ちを利用してしまう形になってしまったけど……
「…じゃあ、もし佐々木さんがよろしければ、たまに私の料理を食べていただけませんか?」
今度は蓮が恐る恐る佐々木に聞くと、佐々木は少し驚いた顔をした。
やっぱり、変だよな。
親しくもないのに…
それでも、俺の料理をあんなに美味しそうに食べてくれる人に、また俺の料理を食べてもらいたい。
「実は私、料理が趣味なんですが、食べてくれる人がいなくて…もしよろしければ、佐々木さんのいい時に食べていただけませんか?」
こんなこと、今までいったことがなかったので、蓮は耳まで真っ赤になってしまった。
佐々木が蓮の手を握りながら、
「もちろん‼︎喜んで‼︎こちらからおねがいしたいぐらいです!」
前のめりに返事をした。
「あ、ありがとう、、ございいます…」
佐々木のの返事と手を握られたことに赤面しつつ、蓮はそして嬉しそうに笑う。
「では、佐々木さんのいい日、メールで教えていただけませんか?…これが私の名刺です。ここにアドレスと名前書いてあります」
蓮はイタズラっぽく笑いながら、佐々木に名刺を渡す。
多分、私ことは覚えてないでしょうね…
あんなに泥酔してたら。
でも、これがきっかけで覚えてもらえたら…
だけど、この名刺には会社の名前も書かれている。
どうか会社の名前で引かれませんように…
蓮の仕事場は世界的に有名な会社。
そのためか、それだけで自分より出来ると思われるのか…特に男性からは引かれる。
だけど、佐々木には引かれたくない。
「立花さん、こちらで働かれてるんですか?」
「ええ…できない社員ですけど…。ここにメールいただけたら、用意しておきますので、家にきてただませんか?」
蓮は引かれないように、心の中で願った。
すると、佐々木の顔はパァーと明るくなり、
「あ!はい‼︎お願いします。えーっと俺の名刺は…」
嬉しそうに微笑んだ。
そして蓮は佐々木と名刺交換をして、部屋から出た。
よかった…引かれなくて。
よかった、また次も会える!
蓮の心は久しぶりに暖かくなった。
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