コーヒーショップで ②

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コーヒーショップで ②

「佐々木さんは甘党なんですね」 後ろに並んでいた蓮が、佐々木の手元を覗き込んだ。 佐々木さんはブラックとか似合いそうなのに、甘党なんてギャップが。 蓮は佐々木の事が少し知れて、うれしかった。 でもあれ、甘党の林さんも甘いっていっていたやつだったような…… 佐々木さんが好きな味ってどんな味なんだろう? 「あ、今日も同じものにされますか?」 蓮は色々考えているうちに、レジを担当しているスタッフの女の子に声をかけられるまで自分の番がきていることを、すっかり忘れていた。 本当は甘いの苦手だけど、佐々木さんの好きな味も知りたいし… 「今日は彼と同じものにするよ。大きさは一番小さいのでお願いするね。あと2つはいつものでお願いします」 蓮はいつものように、にっこり笑いコーヒーを待っていると、佐々木がその場から帰ろうとしていた。 あ! まだ返事もらえてない。 …ここは、強硬手段で、こちらから勝手に決めさせてもらおう。 「また、後日」 蓮は佐々木にだけ聞こえるよに言い、佐々木からの返事を待っていると、 「チーフ、ありがとうございます」 蓮の後ろから大山がやってくる。 「お疲れ様。いつもの買っておいたよ」 蓮はいつも大山が頼んでいるコーヒーを手渡しているうちに、佐々木の姿が、蓮の前からいなくなっていた。 「あれ?ここにいた人、知らない?」 蓮は大山に尋ねつつも、店内をキョロキョロと見渡す。 「チーフ、誰を探されてるんですか?」 後からきた林は、情況がよく掴めないという風に、蓮を見た。 「いや〜、さっきここにいた人と話したい事があったんだけど…」 店内に佐々木がいないと確認した蓮は、店の外に出て探してみたが、やはりそこにも佐々木の姿はなかった。
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