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恋煩い ①
あれからまた、佐々木からの連絡は無くなってしまった。
この前会った時の様子だと、佐々木さん、嫌がってた感じではなかったのに。
もしかしたら、またあの店で会えるかもしれないと行ってみたが、佐々木とは会えず、蓮はそのたびに落ち込んだ。
その後、蓮からから2回ほど電話をかけたが、繋がらず、そんな時は留守電に
『お忙しい時にすみません。また電話します』
と、当たり障りのない言葉だけを残していた。
今日も連絡は…
ないか……
仕事の合間の休憩中、蓮の携帯チェックは定番となり、そして、返事がなく落ち込むのも定番となっていた。
なにやってるんだ…俺…
人気のない場所で蓮が、はぁ〜と溜め息をついていると、
「恋煩いですか?」
林がひょこりと顔を出した。
「恋煩いって…」
恋煩いか…
久々のこの感覚…
そうなのかも知れない。
蓮は苦笑してしまった。
「やっぱり恋煩いなんですね!い〜な〜。私は最近してないです。恋煩い」
「俺、もういいおじさんだよ。林さんのとはちがって、そんなにいいもんじゃないよ」
そう。
そんな、いいものじゃない。
しかも相手は男性だ。
佐々木さんも俺がこんな気持ちでいるなんて知ったら、気持ち悪いに決まってる。
もう少し前に、この気持ちに気づくべきだった。
もう、プライベートでは人と関わらないって決めていたのに、
佐々木さんのことになると、色々知りたくなる。
俺の手料理を食べてくれている、あの笑顔に会いたくなる。
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