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恋煩い ②
「恋煩いの相手の方って、あのコーヒーショップで探されてた方ですか?」
「‼︎林さん…相手の人……みた?」
「チーフと相手の方が話されてたのは、見えました」
やっぱり見られてた‼︎
「じゃあ、やっぱり彼が……」
「違うよ‼︎」
今まで、どんなことがあっても大きな声を出さなかった蓮が勢いよく林の言葉を遮った。
「‼︎…チーフ?」
突然言葉を遮られた林は驚きの目で、蓮を見つめる。
「彼は…彼は…、飲み友達…なんだ」
蓮は咄嗟に嘘をついた。
「最近、行きつけのバーで知り合って、それでよく飲むようになったんだよ。だから、色々話を聞いてもらってる…ただの飲み友達」
蓮は自分でいいつつも、胸のあたりが苦しくなる。
俺は、ゲイだとカミングアウトしてるからいい。
でも佐々木さんはノーマルだ。
もし俺の恋煩いの相手が佐々木さんだってバレたら、佐々木さんが変な目で見られるかもしれない。
「そう…なんですね。すみません。プライベートなことなのに聞いてしまって…」
「…」
「ただ、私嬉しかったんです。コーヒーショップで見たチーフの笑顔。とても幸せそうで…。もし、次の恋をされてるならいいなって」
「…」
「実は私の知り合いにマイノリティの子がいて…、その子がいつも苦しそうにしてるの知ってるので、チーフとその子が重なってしまうのかもしれません」
林はその人のことを思い出してか、少し寂しそうな表情をした。
林さんが言ってた次の恋って…
それって、俺が別れたって
「林さん、俺が別れたって、どうしてそれを…」
誰にも言ってないはずなのに…
「分かりますよ。だって、私たちが飲みに誘ったら、チーフ付き合ってくれてたじゃないですか。いつも忙しいチーフがそんなことしてくれるなんて…。わかっちゃいますよ」
「林さんは鋭いね」
そっか……
隠してるつもりでも、わかってしまうなんて。
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