ディナー ⑤

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ディナー ⑤

「どれも綺麗で美味しそうですね」 冷蔵庫の中の料理を驚きながら見つめる佐々木の姿を見るだけで、蓮は幸せな気持ちになる。 「見た目だけですよ」 それを言うのが精一杯。 蓮は少し照れた。 「あの…俺にできる事はありますか?」 何か手伝おうと、佐々木がスーツの上着を脱いでワイシャツの袖をめくる姿に、蓮はドキッとする。 もし、これからも佐々木さんと食事をする機会があれば、2人でテーブルセッティングしたり、配膳したり… 2人だけの特別な時間が過ぎていくんだ… それから、もしも、佐々木さんがこれからも一緒にいてくれて…… この家で過ごす時間が少しずつ長くなっていって… お互い鍵を交換できるようになったら……… どんなに幸せなんだろう…… そんな淡い未来を思い浮かべてしまう。 「あとは温めるだけなので、座っていてください。すぐにお持ちします」 嬉しさで笑みをこぼしながら、蓮は佐々木が席に座るように促した。 「お肉とお魚、どちらがお好きですか?」 佐々木さんの好みを考えていたら、作りすぎたな… 蓮は改めて自分が作った料理の多さに、苦笑する。 「?」 「佐々木さんがお肉とお魚、赤ワインと白ワインどちらがお好きか分からなくて…」 「?」 「それで、どちらでも大丈夫なように、どちらも用意したんです…」 「え‼︎‼︎両方ですか⁉︎」 「はい…両方…」 「もちろん、両方いただきます‼︎」 「え…でも、量…多くなりますよ…」 かなりの量だ… 逆に佐々木さんに気を使わせてしまった。 蓮が申し訳なさそうにすると、 「立花さんが作ってくださったものは、全部いただきたいです‼︎」 佐々木が力強く答えた。 「では、用意しますね」 蓮は佐々木が『何かお礼をさせてください‼︎』と言った時のことを思い出す。 あの時と同じような気迫。 ついついその気持ちは、佐々木さんが俺に好意を持ってくれているのかもと、勘違いしそうになる。 でも今だけは、勘違いしておきたい… 嬉しそうに微笑みながら蓮はキッチンに向かった。
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