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ディナー ⑦
「あの…」
そんな時、言いにくそうに、何かを決心したかのように、緊張した面持ちで佐々木が口をひらく。
まさか、食事は今日で最後にした言って言われるんじゃないか……
蓮の胸はキリッと痛む。
「立花さんから、たくさん連絡いただいていたのに返事ができてなくて…すみません…」
佐々木は机に頭がくっつくかと思うほど、蓮に頭を下げた。
え?
佐々木さんもその事、気にしてくれてた…のか?
「そんな、そんな…。私はこうして佐々木さんとお食事できてよかったと思っていますよ」
蓮の返事を聞いた佐々木が、心底ほっとしたような表情になり、そして、満面の笑みを浮かべた。
俺はゲイだ。
その事は変えられない。
佐々木さんが知ったら、もう会えないかもしれない。
だけど、もうこの事だけは、このまま隠して佐々木さんに会うのは嫌だ。
蓮の中で、ずっと抑えてきた気持ちが爆発した。
「あの…実は、佐々木さんにお伝えしないとダメなことがあるんです…」
心に決めた蓮は、自信のなさから佐々木から目を逸らした。
「え?」
いつもと違う蓮の雰囲気に、佐々木が緊張していくのが、見なくてもわかった。
言って後悔しないのか?
言わずに、これからも佐々木さんと会えるのか?
「…」
あんなに決心したのに、蓮から次の言葉がなかなか出てこない。
どうしよう……
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