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ディナー ⑧
そんな沈黙の時間が少しすぎた頃、
「…話って…」
はじめに口を切ったのは佐々木だった。
蓮はカラカラになった喉を潤すように、グラスに入っていたワインを一気に飲み干し、深呼吸をし…………
「…実は、わたしは……ゲイなんです…」
「⁉︎⁉︎」
息を呑み、声を失うほど驚く佐々木の気配を感じる。
「本当はこのまま佐々木さんに言わずに、友達になれたらな…と思っていたのですが、日が経つにつれ、時間が経つにつれ、言っていないことが苦しくなってきたんです…」
「…」
「もし、佐々木さんが嫌な思いをされたのでしたら、もう連絡もしません…でも…もしも…知人として接してくださるのなら…また、連絡させてもらってもいいですか?」
これで最後かもしれない。
佐々木さんはこのまま部屋を出ていくかもしれない。
最後はちゃんと佐々木さんの姿を見ておきたいのに…
顔をあげようとするができず、俯き伏せた蓮の目からは涙が流れる。
「……」
また、長い沈黙が流れる。
……………。
言わなきゃ…よかった。
蓮がそう思った時、
「…立花さんがゲイだからって、今の立花さんが変わるわけじゃないですか。俺は立花さんさえ良ければ、連絡を取り合って、またこうしてお食事したいです‼︎」
「⁉︎⁉︎」
長い沈黙があったため拒絶される思っていた蓮だったが、思いもよらない佐々木の言葉に驚き、頭を上げ佐々木を見た。
「当たり前じゃないですか‼︎俺は、今のままの立花さんがいいんです」
『今のままの立花さんがいいんです』
言ってよかった。
どんな言葉より嬉しかった。
ありのままの自分を受け入れてもらえて、
そのままでいいと言われて……
蓮の目には涙が溢れ出し、その涙は滑らかな頬をつたい服を濡らしていく。
!!
急に蓮は佐々木に抱きしめられた。
それはまるで、不安しかなかった蓮の心を優しく包み込むように…
「…いいん…ですか…?」
蓮が恐る恐る聞くと、
「もちろんです‼︎また料理…してくれますか?」
佐々木も嬉しそうに微笑む。
嘘でも、
社交辞令でもない。
佐々木さんの本心を伝えてくれていた。
「また…食べてください」
蓮はは佐々木の胸の中で泣いていた。
そして、蓮の気持ちが落ち着くまで、佐々木はギッュっと蓮を抱きしめ続けてくれた。
ひとしきり泣いた蓮もも元の蓮に戻り、その後、晩だけで2人でワインを何本も開けるほど飲んだ。
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