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「キャッ」と女たちの悲鳴が聞こえた。
だがどちらもケガをしている様子はない。ただ二人とも目を見開き、俺を見つめていた。
何をそんなに見てる……?
そんなことを思ううち、俺の体はゆっくりと後方へと傾き、仰向けに床へ倒れた。後頭部を強打するも痛みは感じない。
足元にヒトミとユウコが立ち、俺を見下ろしている。その目にはどこか軽蔑の光が宿っていた。
どうしてだよ。なんでそんな目で見る……と、思ううちに気づいた。手に、生温かくてぬるぬるしたものがまとわり付いている。
視線をそちらに向けた。手にはまだナイフが握られたままだ。そのナイフは、深々と俺の腹に突き刺さっていた。そこからジワジワと血がにじみ出てくる。
え?なんだよこれ。どういうことだ?
「忘れてたわ」
その声でヒトミを見る。彼女は冷笑を浮かべながら、
「この男、究極のナルシストだったのよね」
「自分大好きな上に自己中。よく考えたら、どこがよかったんだろ」
二人の女は顔を見合わせ、意気投合したように笑い合う。
おい、何してる。早く救急車を。と言ったつもりだが声にならない。
女たちは振り向きもせず、並んで部屋から出て行った。
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