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「健太ってさ、成績悪いし、スポーツも苦手じゃん。
やっぱり絵を極めるしかないよ。
神様は二物を与えないよ」
「大きなお世話だよ。
そのうちオレにだって、モテ期ってやつが来てさ、モテモテのウハウハになるかもしれねぇだろ」
「ふーん、そうなんだ」
春菜はそうつぶやくとオレの顔をのぞき込んだ。
「質問だけどさ、健太って好きな人いるの?」
オレは春菜のその質問にドキマギした。
春菜はオレの顔をじっと見て、オレの答えを待っている。
オレは本心を隠して、春菜から目をそらした。
「好きな人なんていねぇよ。
それにいたとしても春菜には教えない」
そう言った後も、心臓がドキドキと音を立てて鳴り止まない。
人の体って不便だ。
オレは自分の気持ちを隠したいのに、どうしてもドキドキが止まらない。
「そうなんだ、つまんないの。
健太に好きな人がいたら応援してあげようと思ったのに」
春菜はそう言うと、ようやくオレから顔を遠ざけた。
オレはそんな春菜の態度に安心して、ふうと息を吐き、脇目で春菜の顔を見る。
すると、春菜のかわいらしい顔を見た瞬間に胸が締めつけられて、やっぱりオレは春菜が好きなんだと感じていた。
でも、オレは春菜に自分の気持ちを伝えられない理由がある。
家が近所で幼稚園の頃から一緒に遊んでいた春菜も、今では学校で人気ナンバーワン女子だ。
春菜は高嶺の花過ぎる。
オレと春菜は友達で幼なじみがちょうど良い。
きっとそれ以上を望んだら、オレと春菜の関係はきっと壊れてしまうだろう。
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