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きっと春菜と和樹は上手くいくんだろうなぁと、オレは自動販売機でジュースを買いながら考えていた。
そして『健太は本当に好きな人がいないの?』という春菜からのメッセージに、本当の気持ちを返信していたら、未来がどう変わっていたかを想像してみた。
オレと和樹が春菜を取り合う。
それはきっとオレに勝ち目はない戦いだけど、それでもオレは和樹と戦うべきだっただろうか?
自動販売機でジュースを取り、オレが顔を上げるとそこには和樹が立っていた。
「オレさ、今日、春菜に告白しようと思う」
和樹がそう言ったあとに二人の時間が少しだけ止まった。
そして和樹はオレに目を向けると、申し訳なさそうにオレに言った。
「健太に悪いけど、それでいいよな」
言葉に出さなくても、和樹はオレの気持ちに気づいている。
ダメだ……、オレってダサ過ぎる……。
オレは和樹に何も言わずに春菜に目を向け、ジュースを持って歩き出した。
そして、もしも時間が止まってくれたら、オレにとって心地よい時間がずっと続いてくれるのにと、あり得ないことを想像してみる。
春菜との距離感、和樹との距離感。
何も変わらずにずっとこのままでいてくれたならって……。
でも、時間は止まることなく、当たり前に流れ続ける。
やっぱりそうだ。
オレたちは今のままではいられないんだ……。
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