ある男の場合

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ある男の場合

街中にあるスクランブル交差点で信号を待っていた。 信号機が青に変わった。 人々が一斉に歩き出した。 俺もその中の一人だ。 早く渡らないと。 今日は3軒の会社を回らないといけない。 歩き始めたその時だった。 一瞬だった。 向こうから来る人とすれ違った。 元カノだった。 隣には男がいた。 そして人混みに紛れていった。 きっと向こうは、気付いていないだろう。 俺も一瞬誰かと思った。 そして、こんな偶然があるのかと思った。 久しぶりに見るあいつは、出会った頃と変わらない笑顔だった。 付き合っていた最後は、いつも喧嘩をしていて笑い合う事なんて無かった。 思い出すのは泣いていた顔だった。
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