第3話 江嶋家第一子の場合

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江嶋(えじま)(ゆう)(5) 二人でヌキっこして、まだ疼くけれど少しは落ち着いた。 これから先、どうするのかなんて知らない俺は、司さんの事をキョトンとした顔で見ていたらしい。 「なんだ?」 「い、いえ。僕、何かしたほうがいいんですか?何も知らなくてすみません。」 ふっ……と。 それはそれは見惚れる様な、カッコイイ微笑みを見せてくれた。 「かわいいな、優。」 なんでそれがかわいいになるのか、さっぱり分からない僕は、またキョトンとしてしまったらしい。 「っ!…………可愛すぎるだろ、それ。そんなキョトンとした顔、よそでしてたら許さない。」 「あ?どんな顔なんですか、それ。わかんないです。」 「そういう顔。」 ぷに……と頬を押されて、変な顔になる。 訳が分からない。 「匂いキツイな……、もう…我慢ができないから、最後まで止められないからな。」 「っ!……はい。」 僕はもちろん司さんも男同志での行為は初めてで、随分四苦八苦したがどうにか朝方、夜明け前には身体を繋げ、うなじを噛まれて番になった。 僕の身体に司さんの白濁を受けると、一旦ヒートが落ち着いた。 その時点でホテルのフロントに、緊急抑制剤を用意してもらい、帰宅することにした。 結果、その番の契約を結んだ時に妊娠。 お腹が目立つ様になる前に大学を休学して、司さんが一人暮らしするお宅に同居させて貰ってる。 僕も大学に入って自活してたから、家事はできた。 同居を始めた時に籍も入れて、僕は田中優から江嶋優になった。 家同士の問題もなく先日までは幸せの絶頂で、昨日から今朝のテンションは地の底といった風だった。 昨日あれから友人と別れ、どこをどう帰ったのか、知らない間に帰宅。 夜に帰ってきた司さんに、初めて喧嘩腰で詰め寄った。 浮気現場を見たのだと。 司さんは浮気じゃないと言うけど、弁解は出来ないらしく、カフェでの様子を話したら、言葉を詰まらせた。弁解出来ないのは、浮気を肯定したようなものだよね。 昨夜は寝室で籠城した。 今朝、司さんは早くから仕事に出たから、僕もノソノソと寝室から出てきた。 昨日はショックで、晩ごはんの買い物もしてなかったし、ましてや朝食の用意もなく。 フラフラと近くのコンビニになんか食べる物をと買いに出た先で、気分が悪くなった。 気がつくとコンビニの床に倒れてて、口からは嘔吐(おうと)したすえた臭いがして、床には吐瀉物(としゃぶつ)と大量の生温(なまぬる)い水が股を濡らして(したた)り落ちてた。 コンビニの店内で倒れ、床を汚した迷惑なオメガなのに、学生らしき若い店員さんは優しかった。 慌てる僕を励まして、救急車を呼んでくれて。 かかりつけ医の月野総合病院に搬送されたのだけど、助産師の中田さんもいい人で。 司さんに連絡を入れてくれた。 こんな心細い事になるなんて、思ってなかった。 赤ちゃん、ちゃんと産めるか心配だ。 早く司さんに逢いたい。 なんか僕が誤解してるのなら、早く誤解を解いて欲しい。 さっきから下痢したような、お腹の痛みでトイレに篭ってる。 すごい硬い便が、出そうで出ない。 うーーー。 「江嶋さん?江嶋優さん?どこ?」 あ、中田さん、司さんの電話から戻って来たんだ。 連絡ついたかな。 「あ……と……トイレですぅ〜、、うっん、」 「ん?大丈夫か?カギ開けていいか?」 「あ……待ってください。()そうなんで終わったら出てきますから。」 「いやいや、それ違うかもしれんから、息むな!」 「うっんっ……あ?え?あっ、いた!」 「江嶋さん!開けるぞ!」 ガチャ!っと開けて入ってきた中田さんは、僕が便ではなく、赤子を息んでる事に気づいてたみたいだった。 「ほら、それ陣痛!まだ子宮口開いてないから息むなよ!」 それから続けてこう言った。 たまにいるんだよ、う⚫こと思って息む妊夫! ……そんなあけすけな……。 ///////// 僕、恥ずかしくて死にそう。 「江嶋さん、司さんと連絡とれて、こっちに急いで来てくれるから!安心しろ!」 「はいぃ〜〜〜〜。ありがとうございますぅ。」 おなか痛いのが陣痛だったとは。 下痢と間違えちゃった。 ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧ ★☆★ スター・777 ★☆★ ついでに800も! ありがとうございます。 新規の方も()事乍(ことなが)ら、毎日投げてくださる皆様のおかげです。 BのLの中でも鬼門な方もいらっしゃると思いますが、(※需要がなくても)ひっそりと供給する所存です。 スター特典 月野総合病院〜スタッフリスト〜 看護士 橋本くんのプロフィールも公開しました。 2020.06.27 yow<(_ _)>
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