第一話 川崎隼人と家出娘

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 写真見ても清楚系メガネっ子でおでこ出しロング。大正ロマンが似合いそうだ。  大人げなくムカついたってのもあるけどこの手の話になって終始ヘラヘラしてて遊び人って感じが鼻についた。  こういう奴が公私混同し経費でお姉ちゃんとの飲み代を落とすんだろ? …偏見かな。  意外にこういう奴が社運背負ってまで仕事するのかね、オンとオフと切り替えがうまい奴が上に行くってのは聞いたことあるけど…。 ◇◇◇ 「ったく、どっから手ェ付けるかねぇ…」  訪問先の最寄り駅・清永。居酒屋や風紀的によくない夜の店が西口前の大通り(井坂(いさか)通り)に立て並び人やキャッチであふれる。  昼間は人が寄り付かないことに転じ、ヴァンパイア通りと呼ばれてる。もうちょっとあっただろうに…  東口にはいわゆる大衆的な店が見受けられず、高級コンビニが一つあったくらいで喫煙所や公衆便所や遊技場や汚れやゴミがないオフィスタウン。  生活感をまったく感じることが出来ない。  よく街角アンケートかなんかでくたびれたサラリーマンがインタビューを受けてたのが印象的だったがあれは西口の印象で、この街に通勤するってのは選ばれしエリートなんだと思った。  清永構想二十年と政治的戦略が東口駅前に幕で掲げられ、夜にはその東口も姿を変えてゴーストタウンとなる。  クリーンなオフィス街は逆にアウトローで溢れるらしく、ヤ―さんにマフィア、立ちんぼにポン引き、窃盗団に強姦魔の魔窟らしいので地元民は誰も近寄らないらしい(全ては【月間猛毒スナイプズ】調べ)   東の人々が寝静まる頃には西側の住人が目をさます。線を跨いで清永の西口… 大ヒット曲「清永の夜」を象徴するネオンで煌びやかにドレスアップ。  隠す気もないスケベな看板だらけ。まるで光と闇。  掲示板に張ってある選挙ポスターでも「清永改革」だなんて(うた)ってたけど、ここの区長が変えるのは東口であって西口は相変わらず汚れている。  西口は清永に(あら)ず…てか?  んでこの江田って区長… 前・福原部の議会委員。確か『ウォークインクローゼットいっぱいに詰め込んだ疑惑そのもの』とか女性議員に国会で糾弾(きゅうだん)されてたっけ。  側近にイエスマン。コネクションに天下り。マルチに助成金詐欺に政治献金、利権に目がくらんで物流ストップで町工場を潰したってのも記憶に新しい。  そのくせ当人は公用車のガソリン代は地球249周分…。夜には接待でパーリナイッ!!   お土産は手に抱えられないほどのお世話係。連日週刊誌を賑わせてたな…  需要に供給。持ってる物(利権)を最大限生かそうとして提案し可決された法案によって多くの企業は麻痺した。 【生活にまつわる私益等の共存法=私益共存法】 生活に関わるエネルギーは個人の私腹を肥やす物であってはならないとの考えからつまりはエネルギー産業の新規参入打ち止め。  資本主義である我が国でこんなものが可決されるのかと目上たちには色々考えさせられたものだ。  政府の管理にて高騰する石油やガソリン。  それは多方面にダメージを与えるのだ。  加えてデフレ等による銀行借り入れ条件の大幅な厳正化。  低金利ではあるものの融資がされない始末。  これらにより融資のストップ、資金はショートし貸し倒れに不渡り…。  内部告発でエネルギー資源や工業製品を作る会社とのズブズブな関係を暴露され週刊紙に叩かれて辞職を余儀なくされたんだっけ…   国会答弁で『何が悪いんですか?』って開き直ったのが印象的だった。  絵にかいた悪党ぶりで連日ワイドショーを賑わせてた。   国会に顔を出さなくなった今は区の長か。仮にも有名人だが当選させちまうとは…  彼もまあ仕事熱心なこと。町の特色が彼の性格を現してるなぁ…  俺の仕事は風任せ。…何となくだった。灯台もと暗し、この街で今日は探そうかと。正直に言って清永の夜を見てやろうと思った、彼女がいるんじゃないかって気持ちよりも。 「おにいさん、60分五千円ぽっきり。サービス満載。この機を逃さないでねっ」 「…いや、大丈夫」  客引きに店を通されそうになる198センチ。おいおい、さっきのは完全にタッチんぐ~ッ!!やろ。  48時間拘束(よんばち)発動すっぞ。  スケベ街にスケベそうな面して来る歯抜けのじじぃども。スーツダルダルのお疲れ系おじさん。  アゲアゲエブリナイッ!!で『毎日がぁ…?』『エブリデイッ!!』と路上でコールするヤングなグループ。  まだ八時だってのにそこいらに嘔吐物。それに水ぶっかけるラーメン屋の店主…  『お兄さん、遊ぼうよ』とガラガッラ声のニューカマー。  『ラァーシャイセー』と外人のコンビニ店員。
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