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私たちの愛に格差が生まれたのは、いつからだろう。
三年目? 五年目? それとも十年目?
脳内で再生される思い出の断片図、生活の日々。そのどれもが今となっては、すべて空虚に思えてくる。
リビングで横たわる主人を見おろし、私は記念写真だと言わんばかりにスマホで撮る。
私たちは確かに愛しあっていたはずなのに、気づけば、私のほうからは好きが消えていた。一方で、主人は揺るがない一途な愛を貫いていた。喜ぶべきことに違いない。けれど、私にはそれがいつしか重荷となっていたのかもしれない。
わがままな言い分だとわかっている。主人はよくできた夫だ。仕事も家事もできて、文句も一つ言わず、毎日変わらぬ愛を注いでくれる。しかし、今こうして考えてみると、私は心の奥底で疎ましさを覚えていたのかもしれない。
ああ、いけない。感傷に浸っている場合ではなかった。早く作業にとりかかなければ。私の気持ちが変わってしまう前に。
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