オモイデキリウリ

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 投稿サイトを利用しなくはなかったが、筆を折ったわけでない。  人目には触れなかっただけで、作品は少しずつ書き続け、それなりの数になった。  ある日。  この作品たちを本としてみようか、と考えた。  僕は未だに電子書籍に抵抗を感じている人間だ。普段は液晶に映し出されているこの自作の小説たちを、紙で読み返してみたらまた違う体験ができるかもしれないと思ったのだ。  調べてみると、昨今個人での製本はそんなに難しいことではなかった。  唯一気になったのは、印刷部数だった。  部数が多くなるほどに値段は安くなるところがほとんどだったが、別にたくさんの印刷部数を必要とはしていない。創作者たちの集うイベントなどに出る予定も、つもりもないのだから。  だが、たった一冊だけを印刷依頼するというのが、なんだか気が引けてしまった。個人を対象に、一冊でも依頼を受けてくれるサービスはあったので、それを理由するという手もある。    でも。  僕はこの時に思ってしまったのだ。  手元にしか本がなかったら、僕以外の誰一人として、僕の本を読めない。誰にも読んでもらえないのだと。    考えに考えた挙句、僕は自分の作品をまとめた本を、2冊だけ印刷することにした。
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