オモイデキリウリ

　小説を書くこと以上に夢中になって製本作業に没頭し、現存する僕の作品のすべてが、『オモイデキリウリ』という名の本になった。

　すると今度は、新しい熱が僕の中に生まれてしまった。
　この本を、誰かに読んで欲しい、そう思ったのだ。
　決して万人に受けるとは思っていない。単なる趣味の、僕個人の感情や思想を詰め込んだだけの文章。読んだ人間が、笑顔になるとも思えない内容ばかり。
　そんなこと、書いた本人として十分に自覚できている。

　それでも。
　読んで欲しいという熱は、一向に覚める気配がなかった。

　しかし、投稿サイトをもう一度使う気にはなれなかった。
　あれではない。
　今は、紙で、この本の形で作品を読んでもらいたい。
　かと言って、やはり即売会に出るという選択もできなかった。

　考えて、調べた末に。
　僕は自分の本を、ネットオークションに出品することにした。