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製本依頼と同じくらい、今はオークション出品も個人でできるくらい簡単だった。アプリに登録し、写真を撮って、数分の操作だけで、あっという間に僕の本は、出品一覧に表示された。
誰かが、僕の本を買うかもしれない。
その日は、スマホを握りしめ、10分間に100回はページを更新していた気がする。
それくらい僕は、購入の通知が来る瞬間を待ち侘びていた。
しかし、通知が来ることはなかった。
日に日に僕は冷静さを取り戻していた。
そして反省した。
通知に一喜一憂するなんて、自分がもっとも嫌悪していることだ。排除してきた行為だったのに。
僕はその後悔と戒めの感情を、次の作品に込めて、また書き始めた。
そんな新作が書き上がった頃だっただろうか。
オークションアプリから、購入の通知が届いたのは――。
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