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コロナなんて大っ嫌いだあー❗️
「2042年、今年ノーベル賞に万能型コロナウィルスワクチンを開発した田島継助さんが選ばれました。日本人としては12人目の快挙となります。しかし、本人は受賞を拒否して行方をくらましています。」テレビからニュースが流れている。
「この人ノーベル賞もらえるのに拒否するなんてもったいないね。私だったら喜んでもらうのにな。」娘がとても不思議な顔をして言った。
「確かに、もったいなよな。頭のいい人は何考えているかわからんね。じゃあ出かけてくるわ。ママに言っといて。」
「もしかして、フリマの相手と会うの?私も着いてくー。」
「どんな人か分からないし、危ない目に会うかもしれないから留守番してろよ。」と言うと頬を膨らませんて
「絶対行くからね、決めてたの。」と上着を着た。誰に似たんだか一度決めたら言うこと聞きやしない。
今日は、ネットオークションで叔母の遺品のジョッパーのキーホルダー(昔流行ったアニメのキャラクターらしい)を売った人と会う約束をしていた。気はのらないが、あまりにもしつこく連絡がきた為、会うことにしていた。フリマの買い手と会うのは初めてで、少し不安だったので口では断ったが娘が一緒に行くのは少し心強く感じた。指定されたコーヒー屋のテーブルに行くとそこには80歳ぐらいの老人が座っていた。
「すいません、ジョパジョパさんでいらっしゃいますか?」
「はい、そうです。今日はご無理を言いましてすいませんね。」ハンドルネームからして30〜40歳代の人と予想していたので不思議な感じがした
「いえいえ、こちらこそ今日は娘がどうしても一緒に行くときかなくて。」
「気なさらないで、まあまあ、お座りになって。飲み物を頼みましょう。」
と答えると老人はタブレットを渡してきた。
「はじめまして、私、本名を田島継助と申します。改めて今日は本当にご無理を言いまして申し訳ありませんでした。」と言うと
深々と頭を下げた。どこかで聞いたことのある名前だが思い出せなかった。
「本当に気になさらないでください。暇を持て余しているので丁度よかったですよ。私は佐野正純と言いましてこちらが娘のゆかりになります。」と言うと娘も頭を下げ挨拶をした。自己紹介を終えると老人は、
「売っていただいたジョッパーのキーホルダーなんですがね。あれをあなたはどうやって手に入れられたんでしょうか?」と少し不安そうな顔で訊ねてきた。
「あれは最近亡くなった叔母のものでして、捨てるのももったいないと思い、ネットに出したんですよ。」そう私が答えると老人はとても悲しい顔をして
「そうでしたか。もしかして、その方は光子さんというお名前ではありませんか。」
「はい、そうです。叔母の名は佐野光子と言います。ご存知ですか?」
「ええ。これ私のものなんです」と言うとポケットからキーホルダーを出した。
「裏に”生きる”って書いてあったでしょう。消した後を見つけたときは本当にびっくりしました。再びこのキーホルダーに巡り合えるなんて思っていなかったですから。そうあれは22年ぐらい前の話です。私と光子さんは一緒に死のうとしていたんです。」
「あーそれ知ってる。おばさんから一度話し聞いたことあるー。」突然隣から大きな声で娘がしゃべり出した。
「お爺さんがその相手何なんだ。ヤバイチョー感激!」と一人、興奮している。
「そんなこと初めて聞いたぞ、いつ聞いたんんだ?」
「一年ぐらい前に、パパと喧嘩して家出して叔母さんの家に泊まったことあったでしょ。その時よ。」そういえば、些細なことで喧嘩して叔母さんの世話になった事があった。
「そうですか。ゆかりさんは光子さんから話を聞いていましたか。よければそのお話をおじさんに聞かせてもらえないだろうか?」
「私でよければいいよ。そうあれはコロナウィルスが流行った時期のお話。」
「首相より緊急事態宣言が出されました。これで医療崩壊は防げるのでしょうか?」テレビでニュースが流れている。」
スマホのメール受信の音がなった。
「コロナウィルスの影響で経営がなりたたなくなり営業を中止することになりました。つきましては佐野光子の解雇を通知します。今まで、当社で働いていただきありがとうございました。雇用保険の書類等は後日メールさせていただきます。」
何でこうなるの私の人生こんなばっかだ、この仕事気に入っていたのに
再度携帯の音が鳴る、今度は秀人からsnsだ。
「光子、大丈夫か、こんな時にごめん、俺田舎に帰ることにした、別れよう。元気でな。」
「はあ?」秀人とは同じ職場で知り合い付き合ってもう3年ぐらいになる。いつか結婚しようと言っていたのに、しかも、貸した150万円返してもらっていない。あいつバックれるつもりだな。慌てて電話する。プルル、プルル、でやしない。
最悪だ、今月の給料で家賃と光熱費と携帯代支払うと残3万ぐらいだ。まじ、やばい。
親には死んでも助けは求めたくないし、あっ、タブレットの支払いも残っていた。
問題ありすぎて整理がつかない。とりあえず、夕飯のおかずを買いに行こう。本当にこれからどうしようかな。
キキッ、ガッシャーン、歩道を歩いていると車が突っ込んできた。かろうじて避けたが右足を捻った。痛い!右足首に激痛が走る。救急車に運ばれ病院の診断を受けると
「右足首にヒビが入ってしまいましたね。軽いですから入院の必要はありませんが、3週間から一ヶ月自宅で安静にしていてください。」
「先生、会社が倒産して保険に入っていなんですけど。」
「じゃあ全額支払いで国民健康保険に入って保険証が出たら保険証持って来てください。差額を払い戻しますよ。」と冷たく言われた。松葉杖で家まで何とか歩いて帰ってきた。
「あーもう、死にたい。」と大きな声で叫ぶと
「”死にたい”の検索をしました。一緒に死んでくれる人の募集があります。」とスマホが答えた。
”死にたいけど、一人では死ねない人、一緒に死んでくれる人をマッチングします。”
こんなサイトあるんだ、名前、サーシャ、女、32歳、人生に嫌気がさし一緒に死んでくれる人、死に方教えてくれる人募集します。
あなたに相性の良い人を紹介します。
そしゃ丸さん、30歳男性。年下か、いいかもね。
「そしゃ丸まるさん、死にたいですか?」送信。早速返信がきた。
「はい、死にたいです。サーシャさんもですか?」
「はい、死にたいけど、死に方わからないし、一人じゃ死ぬ勇気ありません。」送信
返信「死に方なら、いろいろ調べたので、私が教えますよ。明日都合よければ、会いませんか?道具、家に準備してあるのでこちらにきていただけると助かります」
怪しいけどどうせ死ぬなら誰でもいいか
「わかりました、明日そちらに行くので、住所教えてください。」
「○○区○○○丁目○番地スミナス203号室になります。来る時間わかったら連絡ください。お待ちしております。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
次の日はとてもいい天気で蒸し暑さが増していた。
「はじめまして田島継助です。」
「はじめまして佐野光子です。」予想以上にいい男だ最後にこんな男と死ねるなんてまだ、まだ神様は私を見捨てていないようだ。
「死に方なんですけど、首吊り、薬剤、一酸化炭素中毒、飛び降り、溺死とりあえず5種類用意してしたんですけどどうしましょうか?」
「キンコン、キンコン」玄関の呼び出し音が鳴った。彼は鬱陶しそうな顔をして無視してしてた。
「出なくていいの?」
「いいよでなくて。」
「キンコン、キンコン。」「レストラン フレンキッスのデリバリーサービスです。ドナルド・勇・田中さんから依頼のお料理をお持ちしました。いらっしゃいませんか?田島さん?」
「ねえ、フレンチキッスって超有名な料理店じゃん、ねえ、死ぬ前に食べてみたい。」
「あーもう余計なことしやがって勇のやつ」
「ガチャ」「ご苦労様です。そこにおいてください。ありがとうございました。」
「超、いい匂い、食べていい?美味しい、これフォアグラってやつでしょう、すごく美味しい、感動、死ぬ前にこんなに美味しいもの食べれると思っていなかったからありがとうね。勇って人、超いい人だね」
「馬鹿だよ、自分は大変なのに…。」
「何やっているひとなの?」
「看護師やってるんだよ。コロナでほとんど休まず、自宅にも帰っていないらしい。」
「すごいね、そんなに大変な時にこんな料理プレゼントしてくれるなんて優しいね。あっ、カードついてる。」“おちこんでるかー。美味しい物でも食べて元気出せよ。俺は諦めてないからな、お前と一緒に仕事することを。“
「何でだよ、何であいつはそんなに俺を信じれるんだ、10回も医学部落ちた俺を…、逆に苦痛なんだよもう期待されることが、俺はダメなやつなんだ」
「私なんか羨ましいけどな、私なんか誰も興味持ってくれない。」
その時、田島のスマホがなった、メールのようだ。
「嘘だろ、あいつが亡くなったってコロナにやられたって、テレビやネットで流れてるって何だよそれ」
、俺これから死ぬんですけど……。涙が止まんないんですけど……」と言うと体を震わせ泣いている。
「本当なの」慌てて携帯でニュースをチェックするととある病院の看護師がコロナで亡くなった、と書かれている。」
「何で今日なんだよ、神様は俺に何をしろと言うんだ」と叫ぶ田島はと嗚咽した。
そんな田島を見て光子は思わず彼を抱きしめていた。
「死んじゃだめ」自分でもよくわからないままに言葉が出ていた。
「私馬鹿だからわからないけど、とにかく君は死んじゃだめ」
そしてキスをして田島に言った。
「抱いて」
「うぁあっ」田島は狂ったように光子を抱いた。
田島はその夜なかなか寝ることができず。その間光子はずっと彼をの頭を胸で抱きしてめていたが朝方には寝ていた。自分にこんなお節介なところがあったんだ、驚いた。目を覚ました田島に尋ねた。
「まだ、死にたいと思ってる?」
「わからない?」
「じゃあ、ここに‘生きる‘って書いて。」と目にとまったジョッパーのキーホルダーとペンを田島に渡した。言われるままに田島は‘生きる‘と書いてた。
「いい、これで君は死なないの‘生きる“の、わかった。」
「……。」
「うーん、明日も私来るから。いい死んじゃだめよ」
「もう何が何だかわからないよ。」
「それからしばらく、私たちは、付き合ったと言っていいのかな、何だか彼をほっとけなくて同棲したのよ。彼が医学部にするまでは私が彼の面倒を見るそう決めてた。その頃からかな高校の先生になろうと決めたのは、いい歳だったけど迷いはなかったわ。本当に高校の先生になれてよかった。とても楽しかったの。人生って不思議よね。何がきっかけで動き始めるかなんてわからない。だから、ゆかりちゃんも好きに生きればいいわよ、私は偉そうなことは何も言えないけど生きていれば何かが起きる。」……。
「私ねおばさんの話を聞いて理由はわからないけどとても幸せな気持ちになったの覚えてるよ。」
目の前を見ると田島さんが目から涙を流し、何か取り憑かれたものが取れたような健やかな笑顔でいた。
「そうか先生になったんですね。光子さんは私が受験に合格してから、突然、私の前から消えました。やりたいことがあったんですね。ずっと何が原因だったのか気になっていたんです。このジョッパーのキーホルダーもなくしたものだと思い込んでいました。思わず買ってしまったが、人生は本当にわからない。」
「今日は本当に本当にありがとうございました。お二人がよければお盆に家にお邪魔させてください。」
「いいよね。パパ。」
「ああ」「また連絡ください」
田島さんは何度も何度も深々と頭を下げると去っていった。
帰りの車でテレビをつけると緊急速報が流れた。先日、ノーベル平和賞を拒否して行方の判らなかかった、田島継助さんよりノーベル平和賞を受託すると発表がありました。本日の午後8時より本人から正式に記者会見が行われる模様です。
「あー。」思わず娘の顔を見る。
「あれ、もしかしてパパ気付いてなかったの?何だ教えてあげればよかったね。」
娘は笑顔で答えた。
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