マキさんとタピオカ

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マキさんとタピオカ

「タピオカってさ、不思議だよね」  日曜日の昼下がり。  オープンカフェの席に座りながら、マキさんが言った。 「黒いし、プニプニしてるし、こんにゃくだかゼリーに似てる癖に、元はおイモ なわけでしょ?よく飲み物に入れようと思ったよね」  マキさんがカップの底をまじまじと見詰める。  たっぷりと注がれたミルクティーの底には、黒い粒がチラチラと顔を出していた。 「ホントに誰が考えたんだろうね」 「…知らない。俺はタピオカに詳しいわけじゃないし」  そりゃそっか、と呟いて、マキさんはストローを口にした。  マキさんと俺を、周りの人はどう見るだろう。  まさか、親子とは思うまい。しかし、恋人にも見えないだろう。  俺は今年で28。もうすぐ30に手が届く。  片やマキさんは女子高生。正確な年齢は解らない。確か、16歳とか言っていたような気がする。  俺からすればまだまだ子どもだ。年相応に、可愛いとは思うけど。  先に言っておくと、俺とマキさんはいかがわしい関係ではない。  援助交際でもなければ、最近流行り(?)のパパ活とやらでもない。  強いて言えば、友達だ。  歳の離れた友達。うん…その表現がしっくり来る。  一緒にお茶をするぐらいには、仲が良いと思っている。大概は俺の奢りだがね。  奇妙な偶然が重なって知り合った、年の離れた友達。それが、マキさん。  さん付けなのは、彼女の希望だ。 「マキさんはタピオカ好きなの?」 「んー…まあまあかなぁ」  マキさんがストローを噛みながら言った。ちょっと行儀が悪いぞ。 「その反応だと、そんなに好きじゃなさそうだね」 「好きっちゃ好きだよ。ただ、毎日飲みたいとは思わないね」 「ふーん…。俺は正直嫌いかな。なんだか喉に詰まりそうで怖いし…フラッペの方が好きだね」  この歳になると、頭が固くなるのか中々流行りものに手が出ない。  今日だって、マキさんが連れ出さなきゃこんな所まで来なかっただろう。 「フラッペはまた別モンじゃん。そー言いながらタピオカ飲んでるし。言動と行動が一致してないぞ?」  じっとりした目で、マキさんが睨み付ける。  その通り。今日俺が注文したのは、タピオカ抹茶ラテ。  だって、フラッペの季節じゃないし、タピオカしか無いんだもの、このカフェ。 「別に良いじゃないか。俺が何飲んだって。たまには流行りに乗ってみたかったんだよ」 「何言ってんのよ、いい歳こいて」
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