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不安を打ち消すように、沢口くんからの返信は直ぐにきた。
「一緒だったんだ。俺ら気が合うね。ツーピースっていう少年漫画だけど、西宮さん知ってる?」
気が合う・・この文面を読むと頬が熱くなる。嬉しい。胸がギュっとなる。
ツーピースは確かバトル漫画で最強を目指す話だったはずだ。結構人気な漫画なのでタイトルは知っているがそれ以上は正直わからない。沢口くんが好きならアタシも読んでみようかな。
『知ってるけど、内容はあんまりわかんないかな。』
そう送ると、アタシはツーピースについて検索して調べてみた。調べてるうちに直ぐに返信がくる。沢口くんは意外と返信が早い。
『マジで!勿体ないよ。漫画とか嫌いじゃないなら今度読んでみなよ。絶対ハマるから。』
沢口くんにここまで推されると興味が出てくる。もちろんツーピースの内容も気になるが、何より沢口くんとの共通の話題を持てるということが嬉しい。
『OK。なら今度読んでみるね。』
気がつくと沢口くんとのやり取りに少し緊張が抜けたのか、知らず知らずのうちにOKなんて軽く書いちゃってる。
『ってか俺全巻持ってるから貸そうか?』
「キャーーー!」
アタシは嬉しさのあまり部屋の中で叫び声を上げて、スマホは再び手から滑り落ちる。
い、い、い、今なんと書いてあったの?衝撃過ぎて記憶が飛んでしまった。
アタシはスマホを拾い再び画面を見る。
夢か?頬っぺたをつねる。既につねり過ぎて照れて赤いのか痛くて赤いのかわからない。
貸してくれるの?沢口くんが、このアタシなんかに!
ど、ど、どうすればいいの?この場合?どうすれば正解なの?どうすれば沢口くんと仲良くなれるの?
本から勇気を貰おうと机の本棚の本を一冊とる。タイトルは【西と東の間は草かんむり】パラパラと急いで読み一文に注目する。
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持ちつ持たれつ。人間は誰しも一人では生きていけない。助け合いの精神。これ大事。人からの親切は大切にしよう。
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よし、貸りよう。
アタシは決心した。このようにアタシはとても影響を受けやすいのだ。小学校の時に本やアニメの影響で本当に魔法が使えると思っていたのは思い出したくない黒歴史である。
『お言葉に甘えて貸してもらおうかな。けど迷惑じゃない?』
『全然いいよ。一気に全部だと持って帰るの大変だろうから明日五巻まで持ってくね。』
アタシ言っちゃった。借りるって言っちゃったよ。胸がドキドキする。思い返すと自分でも信じられないくらい大胆なことを言ったと思う。
沢口くん、本当に持ってきてくれるんだ。
そのあとおやすみの連絡が来て、それにアタシも返信して眠りについた。
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