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こういうときは、頭を一度整理しなければならない。
浮気をされたら別れるという言葉に二言はない。三船七海ともそう約束した。しかし、春奈がこのタイミングで達彦さんと別れてしまえば、三船七海が浮気癖のある彼に振り回されて苦しむだけなのではないだろうか。
彼女はそれを望んでいたわけだけれど……。春奈には、昔の自分と重なる彼女を不幸にさせたくなかった。
「彼女には恨まれるかもしれないけれど」
それなら、浮気を知ったという事実を告げて監視を続けたまま、入籍は一旦延期とした方が良い気がする。
「あれ」
春奈はここで、大事なことに気が付いた。
社内不倫がそもそも社内に広まらなければ、達彦さんが支店に異動することはない。三船七海と出会うことも。じゃあ、不倫の情報を社内にリークしたのは誰……?
一般論として、一番考えられそうなのは妻になる春奈。社内不倫を発見して、二人の関係を壊そうと会社にリーク。だが、三船七海の話では、達彦さんの異動後も結婚生活は続いていたことになる。もしも、春奈が社内不倫を知っていたならば即離婚を申し立てているはずだ。
きっと、リークしたのは春奈ではない。春奈は、達彦さんの異動理由も知らずに、三船七海との件で初めて浮気を知って離婚を決意するのだろう。
「誰か、別の人……か」
リークした人が誰かわからない限りは、三船七海が達彦さんと出会う未来を変えられない。
「連絡とってみるか」
ポケットに入れていたスマホを手にする。
難波航大。達彦さんの同期で、春奈の大学のテニスサークルの先輩。彼なら何か知っているかもしれない。
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