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『夜なら空いてるよ。達彦も一緒?』
難波先輩からは、すぐに返信が返ってきた。
『いえ、二人で話がしたいです』
『達彦は大丈夫なの?』
入籍前日に誘われたらその反応になるわよね。春奈は苦笑いをする。
『問題ないです。じゃあ、明日の18時に南通りでお願いします』
『何か事情があるのね。了解』
さすが難波先輩。察しが良い。サークルの時も、よく相談話を聞いてくれていたっけ。今回は、詳しい事情を話すわけにはいかないけれど。
「夜ごはん、作る気にはなれないな……」
思わずため息をつく。今日は達彦さんも飲みに行くって言っていたし……。もしかして、今日も……?
ああ、考えただけで嫌になる。むしゃくしゃする。
ピコン。スマホの画面が光る。
『今日でも良いけど、どう?』
難波先輩だ。見ていたのかというくらいベストなタイミングだ。
でも、今日……か。
今、人と会えば泣いてしまいそうな気がして嫌だった。
それでも、このまま達彦さんに浮気を問い詰めたら、それこそ泣いてしまうと思う。それだけは、絶対に嫌だった。
『行きたいです』
気づけば、そう返信している自分がいた。
『じゃあ、18時半に南通りでね』
18時半なら、あと30分ほどで家を出ないといけないではないか。
「大学生の頃じゃないんだから」
春奈は文句を言いながらも、すぐに準備を始めるのだった。
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